古きを切り捨て新しきにすがる? |
Excite エキサイト : 経済ニュース オーディオの歴史は、70年代後半にひとつのピークを迎えた。 どんなシステムを使っても基本はアナログであったオーディオが、CDの登場とともにデジタル化されていったのである。 70年代の後半というのは、まさにその切り替えが行われる直前で、オーディオ製品のアナログ音源に対する音質の追求は、ひとつの頂点を迎えたと言えなくも無い。 レコードにしろテープにしろ、ここに極まった状態といえるだろう。 私自身も、サラリーマンになって初のボーナスでNakamichiの581を購入し、その音質の高さに驚嘆していたときだった。 そして80年代に入り、PCMによる音楽ソースのデジタル化がスタートする。 たしかにテープ特有のヒス・ノイズも無く、レコード針の盤面をこする音もしない。 しかし、ハイレベルなファンは知っていることであるが、一定以上の高音と、一定以下の低音は、この時点でカットされることにる。 普通のポピュラーなどを聞いている場合、中音域が中心になるのでほとんど気になることは無いが、クラシックやライブの録音などを聞くと、なんか拍子抜けする部分がある。 その後、DATが頓挫したのと同時期にMDが一般に普及し始める。 MDは、CDなどの音声データをACTRACというSONYの音声圧縮技術によってコンパクト化することで小型のオーディオ機器に普及した。 これは、CDがレコードの代わりだとしたら、MDはカセットテープの代わりといえるだろう。 しかし、音声圧縮技術というのは、間引きの技術である。 平たく言ってしまえば、同じようなデータが続く場合、その部分が連続するという情報を保存することで、その間の情報を削り落とし、データをコンパクトにするのである。 MDは、その手軽さから、日本国内では大いに受け入れられることになるのである。(ちなみに、日本以外ではカセットテープが主流だった) そして、インターネットの普及とともに、MP3(Mpeg1-Layer3)等の音声圧縮技術が発達し、今では、4分程度の曲が、だいたいキロバイト程度にまで圧縮できるようになってきた。 その圧縮率は、だいたい100分の1である。 これらの音楽データを再生する機器も、当然音源に見合ったものへと変化してゆく。 お気づきだろうか。 実際には、音質がどんどんと低下していることを。 それも、段階を踏んでの音質低下を利便性が上回ることによって、気づかないうちに慣らされてしまっていることを。 オーディオ機器不況の定常化はすでにかなりの期間になる。 その間に有名無名のたくさんのオーディオメーカーが、脱落しているのである。 特に中小の高級オーディオ機器メーカーの減少はかなりのものになる。 しかし、一般的にオーディオ機器は長持ちするので、今での昔のままの「良質の音」を聞き続けることができる。 この過去の良質の遺産を一気に無くし、国民総低音質社会を作り、新たなオーディオ機器市場を創設する。 これはオーディオだけにとどまらない。 個人的には、どう見ても液晶画面の画質は、CRT画面に勝てないと思っている。 それもデジタル化された映像は、先の音質と同じで間引き映像であるので、オリジナルの品質を維持することは不可能である。 特にテレビは、一般家庭のテレビを2011年までに全て地上波デジタル受信型に入れ替える必要がある関係上、経済産業省や総務省もやっきになっている。 本当はこれが狙いのPSE法ではないのかと思っても不思議は無いのではないだろうか。 |
by bankiero
| 2006-03-30 17:41
| 雑感
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